第9回 歯科TBI

補助用具 〜歯間ブラシとフロスどう使い分ける?〜 その3

更谷真耶 更谷真耶

# コラム

歯科衛生士の必須スキルTBIについて、ラプレシャス運営スタッフの更谷が複数回に分けてお伝えしていきます。

 

 

臨床においての実践と体験談

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フロスと同様、歯間ブラシも、実際に歯科医院に来られる患者さんにお勧めるのが難しいと思うことがあります。

患者さんの健康を思い一生懸命TBIするけれど、伝え方が難しかったり、伝えてもなかなか定着しなかったり、お悩みの方も多いはず・・・

 

わたしが臨床において、「手ごたえあり!」と思った体験談をひとつお話しします。

 

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《Hさん 50代 男性》

メンテナンスに来てくださっているにもかかわらず、炎症がコントロールされていない中等度歯周病の方でした。

縁上のプラークコントロールは悪くないものの、隣接歯肉からの出血、クレンチング(力の問題)や喫煙などの様々な原因が合わさって、深くなった歯周ポケットに縁下プラークが溜まる→そして更に炎症が起こり歯周病が進行するという悪循環に陥っていました。

歯間ブラシを勧めてもなかなか定着せず・・・この方が来院するたびに毎回頭を悩ませ、TBIどころかポケット内を洗浄し再付着している歯石を取るのに精一杯な自分。

 

このままでは、現状維持どころか悪くなる一方・・・と思ったわたしは、

患者さんに歯周病の治療を持ち掛けました。

今までずっとメインテナンスを受けていた患者さんに治療を持ちかけることは非常に勇気がいることです。

 

ずっと通っていたのに、なんで?」という話になり兼ねません。

このときの説明方法として、「お口の中のお掃除は、お部屋のお掃除と一緒です。

毎日掃除をしていても、細かいところに汚れが溜まってしまうものです。

みなさん年に1回はお部屋の大掃除をしますよね。

(再度、歯周病についてと現在のHさんの状況を説明し)

いつもは◯ヶ月の間隔でお越しいただいていましたが、少し間隔を短くして数回お越しいただくことは可能ですか?」と尋ねてみたところ

患者さんもご自身の現状についてはしっかり理解をされていたため、快くOKのお返事を頂き治療を開始しました。

 

治療開始

もともとメインテナンスにお越しいただいていたこともあり、縁下歯石はあまり付着していませんでした。

今回の治療の大きな目的は「回数をかけてTBIを行い、歯間ブラシを定着させる」そして、炎症をコントロールすることでした。

治療の中ではポケット内洗浄をしながらほとんどの時間を歯間ブラシの指導に時間に費やしました。

 

まずは

1.サイズの合った歯間ブラシの処方

2.使用方法の確認

(模型を使っての説明→鏡を見せながら口腔内で説明→チェアを起こして実際に患者さんに通してもらい確認(このとき前歯部と臼歯部どちらも通してもらう))

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3.交換時期の説明

(治療中は細菌数をグンと減らしたいので、衛生面を考え頻繁に交換してもらう。フィラメントが抜けたりワイヤーが折れたりしない限り、通常は2週間〜1ヶ月に一度は交換。)

この患者さんのリスク部位と出血部位を考慮し、「とにかくこの治療期間中は歯間ブラシをメインとして使うくらいでも良いです!」と熱烈にお伝えしました。

 

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素直に患者さんに気持ちをお伝えする

 

お仕事がお忙しく次の来院まで少し期間が空いてしまいましたが、その期間中すごく頑張ってくださっていた模様。

その変化は既に歯肉状態に現れていました。

今までの歯石付着と出血の状態が嘘のようで、わたしは嬉しい気持ちでいっぱいになり、それを素直に患者さんにお伝えしました。

 

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すると、患者さんのモチベーションが更に上がったのです!

 

「市販の歯間ブラシも使ってみたけど、何か違うねんな〜同じようなサイズを選んだつもりやけど、使った後のスッキリ感が違う!」

「一番奥の歯の後ろ(最後臼歯部の遠心)はL字型のほうがやりやすいな〜」

と、メインテナンス時にあれだけ勧めても定着しなかった歯間ブラシの話を患者さんから積極的にしてくださるようになりました。

 

患者さん自身が使用感の差に気づくほどしっかり使ってくださっていることにまた感激しました。

 

 

患者さんから学んだこと

 

この患者さんから学んだことは、「縁上のプラークをしっかり除去するだけでもこんなに歯肉の状態が変わるんだ!」ということです。

わたしが受け持つようになったころは前衛生士から担当が変わったこともあり、なかなか上手くコミュニケーションが取れず、現在の状態になるまで少々時間はかかってしまいましたが、良くなったことをきっかけに患者さんからもいろいろとお話してくださるようになりました。

 

重度歯周病のため、禁煙指導やTCH指導、免疫力アップなど、まだまだ課題はたくさんですが、まずは大きく一歩を踏み出せたのではないかと喜びを感じています。

次回に続きます。

 

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