第4回 医院インタビュー 堀部歯科クリニック様

医院研修ケーススタディ:出会い・悩み・ご提案 ~院長先生の覚悟~

岡村乃里恵 岡村乃里恵

# コラム

 

歯科衛生士のサポートをするラ・プレシャスの医院研修。

実際にご依頼頂いている医院様の実例をケーススタディとしてご紹介いたします。

『出会いから、お悩み、ご提案、研修を始めてみて問題解決まで』を綴りました。

6回に分けて、インストラクター岡村がほりべ歯科様で行ってきたことをご紹介していきます。

 

第1回 出会い・悩み・ご提案 ~院長先生の覚悟~  ⇒この記事はここ

第2回 研修スタート ~基礎トレーニング~  ⇒ここからは次回

第3回 研修2年目 ~新人衛生士入社と予防システムの変更~

第4回 問題発生 ~衛生士から院長への不信感?~

第5回 研修4年目 ~院内研修制度の導入~

第6回 医院増築 ~個性を伸ばすデンタルエステの導入~

 

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インストラクターの岡村が医院研修で6年間行かせて頂いています。

私がケーススタディの第一弾として、ほりべ歯科クリニックをご紹介させていただく理由は「自分の働く歯科医院が好き!」とスタッフ誰もが心から思えていらっしゃること。

こうなるには紆余曲折があり、院長先生の変化、スタッフの変化が医院の成長となっていることを、H21年の4月より研修に入らせていただき側で見てきました。

医院の成長には院長先生のスタッフに対する想いと、スタッフが成長したいと思う気持ちと風土作り、どれもが大切であることを一緒に学ばせていただいております。

 


 

 

 

ほりべ歯科様について

 

京都市北区西賀茂の開業12年目の歯科医院様。

ドクター3名、歯科衛生士10名、受付、アシスタント4名、クリーンスタッフ3名、チェアー11台のクリニック。

 

ほりべ先生との出会い

 

H19年、歯科衛生士の育成サポートと、衛生士の活躍の場を拡げていくためのデンタルエステの普及活動を行うために独立し、H20年、フリーランスとなって初めてのデンタルエステの講演会を行うことになりました。

ほりべ先生との出会いはその講演会でした。

スタッフと共におこし下さり、最前列に座られていたことを今でも思い返すことができます。

講演会後にご挨拶をさせていただいた時に、「うちの医院でデンタルエステの講習会をしてほしい」と依頼を受けH20年の1月〜4月にわたって3回研修をおこなうことになりました。

 

医院へ不満

 

1回目のデンタルエステ講習会ときに、何となく院長とスタッフとの関係性は良くないのかもしれない・・と感じていました。

2回目、スタッフも私に気を許し始めると、ぼろぼろと出てくる医院への不満。

院長への不満。

 

講習会の合間に衛生士たちに話を聞いてみると

「忙しすぎて、歯科衛生士として歯周病の治療をきちんと行うことができない」

「勉強しても活かすことができない」

「院長が話しを聞いてくれない」

などなど、他の医院でもよく聞くおはなし・・

 

院長とのコミュニケーション不足、感情のもつれ、予防のしくみの問題、嬉しいことですが患者さんの急激な増加による対応力不足

 

 

院長からのご相談

 

そしてほりべ先生からも講習会終了後に相談を受けました。

現在手元にはありませんが、問題点が箇条書きに書き連ねられた紙を手渡され、そこには、たくさんのお悩みが綴られていました。

 

「スタッフとうまくコミュニケーションがとれずに関係性が悪い。」

「ほんとにがんばってくれているスタッフを活かすことができていない。」

「衛生士の教育方法がわからなくて今後どうしていいのかわからない。」

「衛生士のやりがいを感じることができる、予防のしくみを作っていきたい・・が難しい。」

 

 

医院の課題

 

衛生士と先生と双方から話を聞くと、双方に大きな食い違いはなく、感情を抜いて考えると、課題は以下のようなものでした。

・歯周病治療、予防のしくみの作り方

・それに対応する衛生士の教育を誰が行うのか?

・いつから始めるのか?

・歯周病治療を行うことによって、今でも予約が取りにくい状況であるのに、

どうしたらいいのか…

 

院長と衛生士の感情的な問題だけではなく、医院として考える時期だと思えました。

ただ感情というものは、しくみが変わったからといって、すぐに切り替えることはむずかしい。

タイミングがずれれば、話し合っても解決するとは限らない。

 

その時には6名いた歯科衛生士の内、新人3人を除くトップ3人の衛生士が退職を希望するという事態にまで進展していました。

この時点ではあくまでご相談を受けそれにお答えしたという段階で、医院研修としてのご依頼を受けるつもりはありませんでした。

 

 

ご依頼

 

そして、H20年の暮れも押し迫った頃に、堀部先生から相談があるとメールが・・

文面から、ひしひしと伝わってくる切迫した危機感や不安感。

 

年が明けてからなんて言えず・・お互いの予定が合うのが、年末の12月30日・・

大阪でお会いすることにしました。

 

思っていた通り、先生の抱えられているお悩みは重いものでした。

・トップの3人の衛生士の退職が決まったこと

・残された新人衛生士が引き継ぎで患者さまを担当することができるのか

・残された衛生士までもが退職をしないか

 

そしてその頃、ほりべ歯科は増床の移転が決まっていて、嬉しいはずの移転さえもが大きな

不安となり、ほりべ先生を苦しめていました。

 

私はお話を聞いていて、『残された新人衛生士の心情を察すると、不安でたまらないのでは・・』と思い、先生からの仕事の依頼をお受けすることに決めました。

 

 

大切にしていること

 

私が仕事を行っていく上で大切にしていることがあります。

『院長が真剣にスタッフの成長を願ってくださること。』

この1点はかかせないことです。

 

上手にコミュニケーションが取ることができる院長先生や、院内に教育が根付いていらっしゃる医院に私は必要ありません。

 

真剣にスタッフのことを考え、スタッフの成長を願っているにもかかわらず、うまく想いを伝えることができない・・、衛生士業務のスキルUP、やりがいを持って欲しいと願ってはいるものの、衛生士の教育をどのように取り組んでいいのかかがわからず困られている院長先生。

 

自分自身を変えようと努力されている院長と共に仕事がしたいと思っています。

 

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ご提案

 

暮れも差し迫った日に私がほりべ先生にまず提案したこと。

まずはゴールを設定しました。

 

1点目、歯周病の基本治療が行える衛生士を育てることと予防業務の仕組みづくり。

2点目、教わったことに、経験と工夫をプラスして、先輩が後輩を指導することができる院内研修制度が自然にできる医院にすること。

 

そしてそのゴールを達成するための具体的なご提案。

 

○ 提案1 スタート時期

先生は『来月からすぐに』とのことでしたが、感情のもつれが原因で辞めるスタッフと、残るスタッフを交えて教育するより、退職した後に教育させて頂いた方が全員で同じ方向を見ることができ、モチベーションをあげやすいと考えました。

 

○ 提案2 診療日に研修を実施

やり方を教えるだけではなく、できるようになるまで何度も繰り返し研修を行っていきたいことため、診療日に研修をさせて頂くようご提案しました。

休診日に研修を希望される医院様もありますが、ほりべ歯科さまでは、衛生士の習熟度が浅いことから長期スパンが必要であるために診療日にサポートさせていただくことをお勧めしました。

 

○ 提案3 予防業務のアポイント調整

午前中は今まで通り患者さんを担当していただいて、症例検討をくりかえし、学んだことが活かされているかを確認する時間とする。

午後からは3人の衛生士のアポイントをカットしていただき、研修時間とすること。

 

1年かけて、基本的なテクニカルなどの、検査・目的別スケーリング・PMTC・読影・歯周病基本知識を学んでいただくことを考え、1年間は午後のアポイント調整を行っていただきたいことをお伝えしました。

 

○ 提案4 月2回のサポート

残されたスタッフの不安の解消、2年目で教わる人がいないという不安定な状況から、少しでも早く教育速度を早める必要があるために月に2回のサポートを行いたいと考えていることをお伝えしました。

 

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ご提案に対する責任

 

いつもご提案する際に、医院さまへの負担を考えます。

そして責任の大きさを感じます。

 

アポイントをカットしていただくことは、その時間に衛生士が担当する患者さんの人数×時間×期間の予防保険点数が発生しないということ。

院長先生のお気持ちを考えると、ご提案はとても身が引き締まるような時間です。

 

 

ほりべ先生のご決断

 

ほりべ先生からのお返事は「全てお任せします!」との丸投げ状態の快諾でした 笑

 

後日、岡村にお願いしようと思ったのはなぜか?を聞かせていただいたところ、初対面の印象から、人間的に信頼してくださったそうです。

ただ、私の仕事は人柄だけではなく、結果が伴うことが必要なこと。

 

衛生士のモチベーション、スキルアップ、そしてそれらは歯科衛生士の定着となり、患者増患と自然に繋がっていく。

「毎日の結果が次に繋がり」

「結果は目の前の人から見えることと、数字から見えることとがある」

この2つは時間差があっても連動していると考えています。

 

丸投げていただくことは、嬉しくおもいますが、予防のしくみを作っていくのは、院長の考え方、全スタッフの理解と協力があってこそ。

 

今、スタッフが何に悩み、何を考え、何ができるようになってきて、私がどのように声がけをしているのか、結果だけではなく、そのプロセスを知っていただきたく、私からの最後の提案はお昼休みには私とほりべ先生とで、研修の報告や相談をする時間を30分は設けていただきたいことをお願いしました。

 

このように、人を信用し丸投げを覚悟する院長先生と、それを受ける私との間では、お互いに「覚悟」を決めた日となりました。

 

 

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